Text:黒田隆憲
2025年に結成20周年を迎えたONE OK ROCKは、通算11枚目のアルバム『DETOX』を携え、スタジアムとドームを巡る国内ツアーを開催した。大分、神奈川、北海道、大阪の4カ所7公演で約36万人を動員。その象徴となったのが、8月31日に約7万人を集めた日産スタジアム公演である。この一夜を収めたLive DVD&Blu-ray『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025 AT NISSAN STADIUM』が7月29日にリリースされた。
今春に全世界で公開された映画版との大きな違いは、映画版では未収録だった一部MCを追加し、当日披露された全21曲とInstrumentalを網羅した完全版であることだ。さらに、100ページに及ぶブックレットも封入される。20周年の到達点を壮大なスケールで示す一方、終盤のアクシデントを境に、周到に構築されたショーの内側から4人の生身の関係が露わになっていく──本作は、その一部始終を完全版映像とブックレットの両面から立体的に伝える。
日が沈み始めたスタジアム。ステージ背後に設置された巨大LEDスクリーンに、人類が地球を「住めない場所」へと変えてしまった未来の世界が映し出される。人々は現実を離れて仮想空間に新たな世界を築き、あらゆる問いに答えるAIを神のように崇める。だが、取り繕われた「平和」の下では争いが絶えず、その足元で菌のようなものが増殖していく──。平和と争い、支配と自由が表裏一体であることを示すストーリー。その終わりに掲げられるのは、音楽の力で世界を“デトックス”し、「Be Free」と呼びかけるメッセージだ。その言葉に呼応するように、マイクを高々と掲げたTakaが登場。「Puppets Can’t Control You」でライブの幕を開ける。

アイメイクを施したTakaの鋭い眼差し、ステージから噴き上がる炎、疾走するバンドサウンドと静謐なブレイクの鮮やかな対比。続く「Save Yourself」ではToruのミュートカッティングにRyotaとTomoyaのタイトなリズムが絡み、早くもシンガロングが広がっていく。「Make It Out Alive」では、シャッフルするビートが祭囃子のような躍動を生み、ザクザクと刻むギターとTomoyaの重戦車のようなドラムに合わせ、オーディエンスも肩を組んで頭を振る。音響はスタジアムを包む歓声の厚みを保ちながら、ギター、ベース、ドラムそれぞれのフレーズを鮮明に立ち上げる。
「今日、俺らには何も守る必要ないから、全力で行かせてもらいます」とTakaが言い放つと、ギターのアルペジオと同時に大歓声が湧き、「Cry out」へ。メンバーのコーラスと約7万人の歌声が重なり、Takaはステージを駆け回りながら、一人ひとりに語りかけるように歌う。「NASTY」では、ささくれ立つディストーションギター、情熱的なドラム、地を這うベース、カラフルなレーザーと幾何学模様のCGが渾然一体となる。世界各地のステージで鍛え上げられた4人が、巨大会場を精密にコントロールしていく姿は壮観だ。
その直後のMCでは、4人の飾らない素顔がのぞく。「気づいたら僕らも20周年ですわ」と喜びを口にしたTomoyaは、自身は加入19周年だと気づき、「来年、俺だけ祝って」と場内の笑いを誘う。Ryotaも、日産への思いが強すぎるあまり、「昨日は前半で全部出し切っちゃって……」と、終盤には手がつったことを告白。それでも本番前に調整し、「むしろ昨日より俺、絶好調なんで」と笑顔を見せる。なかでも印象深いのは、自分が始めたバンドでこの景色へたどり着いたToruが、普段は口にしない思いを「ありがとう」と伝える場面だ。Takaは照れ隠しに憎まれ口を叩きながらも、「俺もお前らと一緒に音楽できて、本当にうれしいよ」と返す。そんなやり取りの一つひとつに、20年をかけて積み上げてきた互いへの信頼とリスペクトがにじむ。
その思いを受けて演奏されるのが、2008年発表の「Living Dolls」だ。序盤を一気に駆け抜けたあと、汗ばんだ身体に風を通すような清々しさと、懐かしさを帯びた切ないメロディが広がる。「俺の声に負けるな」と呼びかけるTakaに、スタジアム全体が大合唱で応え、ライブは早くも最初の感情的なピークを迎える。『DETOX』全曲の合間に20年間を振り返る旧曲を散りばめたセットリストは、周年をノスタルジーだけに回収せず、過去曲も現在のONE OK ROCKの音として鳴らし直すものだ。
中盤は、ステージ上の編成を大胆に変化させることで、それぞれの持ち味を浮かび上がらせる。「Party’s Over」では、エキゾチックなギターソロやデスボイスがクラシカルな構成美を揺さぶり、巨大な傘のCGと回転するカメラが混沌を増幅する。「Tiny Pieces」を挟み、「This Can’t Be Us」ではOsamu Fukuzawaが加わった5人編成で、ピアノを起点とする壮大なアンサンブルを構築。そこからTakaとFukuzawaだけが残り、「All Mine」「Renegades」を歌とピアノでじっくり聴かせる。客席のライトとレーザー、スモークが星空や雲海のような空間を作り、ドローンやクレーンによる広い画が7万人の会場に訪れた静けさをゆっくりと映し出す。一方、近景のカメラはTakaの表情を丹念に追い、地声とファルセットを行き来する繊細なアーティキュレーションや息遣いまで浮かび上がらせた。

その二人がステージを離れると、今度はToru、Ryota、Tomoyaの3人が戻り、「Instrumental」で主役を担う。Ryotaがビブラートを効かせた高音域のベースソロを、Tomoyaが豪快にタムを回すドラムソロを、Toruがライトハンド奏法を交えたギターソロを披露。互いにバトンを渡しながら、歌がなくともスタジアムを揺らす強靭なアンサンブルを作り上げていく。
湧き上がる観客の熱気も冷めやらぬなか、客席からCHICO CARLITOとPaleduskが登場すると、会場はたちまち興奮の坩堝と化す。「C.U.R.I.O.S.I.T.Y.」「One by One」ではラップ、デスボイス、ツインドラム、トリプルギターが入り乱れ、飛び交うライトと、短いショットを矢継ぎ早に切り替える映像編集が、ステージを祝祭的なカオスへ変えていく。「The Beginning」へなだれ込むと、肩を組んでヘッドバンギングする観客の波を客席後方や上空など多方向のカメラが捉える。現地の一つの席からは同時に見渡せない、ステージとスタジアム全体の熱狂が、映像のなかに再構成されている。
「Delusion:All」を前に、Takaは『DETOX』について語り出す。約10年前から海外へ出て、さまざまな景色を見てきた。そのなかで「自分たちがどうあるべきかということを追求して、追求して、追求しまくって作ったアルバム」が『DETOX』なのだという。「大事なことに対して、大事なことをちゃんと真正面からぶつけていく」一方、強い主張は時に攻撃となり、誰かを傷つける。だからこそ「その中にはしっかりと優しさを持って」伝えたいという。この言葉を受け、Takaが「一番自分たちにとって大事な曲」と紹介した「Delusion:All」は、単なる攻撃的なロックナンバーではなく、分断の先を模索する歌として響く。

ところが、その直後にハプニングが起きる。「Dystopia」を歌い終えると、Takaが足を引きずって退場。「左足が動かねぇんだ」とステージ袖から状況を伝え、やがて車椅子で戻る。それでも「ぜってぇやめねぇからな。やらせてくれ、このまま」と続行を望み、お立ち台に腰掛けて「Tropical Therapy」へ。座ったままでも、その声は伸びやかさと力を失わない。客席から大きな拍手と歓声が上がる。
歌い終えたTakaは「へこむわ」と漏らしながらも、負傷を自らに課された試練と捉え、「俺をなめんなよ。俺は強えぞ」と自らを奮い立たせる。そして本編最後の曲を前に、『DETOX』は今の世の中への「許せない」という感情から生まれたと明かす。ただ、怒りを抱え続ければ大切なものを見失い、いつか自分が誰かにとって許されない存在になる。それを教えてくれたのがこのバンドであり、「許すこと」がアルバムの裏テーマなのだという。動かない足への悔しさを隠さなかった直後だけに、その言葉は観客だけでなく、自分自身にも向けられているように聞こえる。

6/8拍子の揺れるリズムとストリングスが寄り添う「The Pilot </3」では、カメラがTakaだけでなく、彼を見つめるToru、Ryota、Tomoyaの表情を繰り返し捉える。澄んだ声から、がなるようなシャウトへ。最後はお立ち台へ倒れ込み、長い息で歌い切った。
アンコールでは、Takaが片足で跳びながら再登場。「Stand Out Fit In」でマイクスタンドを杖のように使い、「俺の分もジャンプしてくれ」と観客へ身体の動きを託す。「+Matter」ではステージを端から端まで移動するTakaへ、Toruがさりげなく肩を貸す。「ありがとう、Toru」。短い言葉と動作に、20年間の関係が凝縮されている。そして「We are」へ。「あなたたちが諦めないから、僕らも諦めない」という言葉に応えるように大合唱が起こり、夜空に花火が上がる。バンドが観客を励ますはずだった歌は、この夜、観客がバンドを支える歌にもなった。

100ページのブックレットには、ライブ写真とメンバー4人のソロインタビューに加え、アルバムアート、ツアーグッズ、オープニング映像のクリエイティブを担ったRyota、Emil Öhlund、Junji Kumaharaによる座談会、デザインのラフスケッチなどを収録。Takaの負傷時に4人が何を考えていたのか、「The Pilot </3」でどんな感情を共有していたのかも、それぞれの言葉から読み取れる。
20周年の集大成とは、完成された記念碑を残すことだけではない。思いがけず計画が崩れた瞬間にも、互いを支え、観客に支えられながら音楽を続けること。その強さまで記録した本作は、ONE OK ROCKがなぜ20年にわたって走り続け、今なお4人で世界へ向かうのかを伝えているのだ。
『DETOX』を掲げた旅は南米、北米、日本、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアへ広がり、49都市54公演で66万人を動員。そして2026年8月からは、愛知、福岡、宮城、千葉を巡る『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR FINAL 2026』が待っている。日産スタジアムの一夜は、壮大な旅の終着点ではない。世界を一巡した4人が再び日本へ帰ってくる、その先の景色を照らす記録なのである。



2026年8月11日(火・祝)愛知・IGアリーナ
2026年8月12日(水)愛知・IGアリーナ
2026年8月18日(火)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年8月19日(水)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年8月25日(火)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年8月26日(水)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年9月5日(土)千葉・ZOZOマリンスタジアム
2026年9月6日(日)千葉・ZOZOマリンスタジアム
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| # | Наименование новости | Тональность | Информативность | Дата публикации |
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