Interview & Text: 荻原梓
Photos: 森好弘
「最低な昨日なんて越えていけ」
再デビュー曲「GUM」に刻まれたその言葉は、Junna自身の歩みとも重なっている。
TVアニメ『マクロスΔ』のワルキューレでの活動や数々のアニメ主題歌を通じて、唯一無二の歌声を届けてきた彼女は、ソニー・ミュージックレーベルズへの移籍を機にアーティスト名を“JUNNA”から“Junna”へ変更し、今年4月、新たなスタートを切った。約2年間自分自身と向き合って完成したEP『ハローグッバイ』には、これまでの彼女を形作ってきた強さと、新たに手にした柔らかさが同居している。
“強くあろうとしてきた自分”から、“弱さも含めて自分らしさだと認める自分”へ。再出発の先に見据える景色について、Junnaが率直な言葉で語った。
──再デビューでアーティスト名がJUNNAからJunnaに変わりました。実際にこの新しい“Junna”として作品を完成させた今、どんな心境ですか?
Junna:新しい私になりつつも、今まで10年間やってきたので、その私も大切にして、より“素の私”をみなさんにお届けできたらいいなという気持ちでいます。
──“Junna”の表記には何か意味があるんですか?
Junna:JUNNAの時も自分で名前を決めました。当時は強いアーティストになりたくて、憧れている人たちもそういう人が多くて。力強さで誰かを引っ張ったり、誰かの背中を押せたりできるような、そういうアーティストになりたいと思っていたんです。でも、誰かに背中を押してほしい時って、優しく寄り添って「一緒に頑張ろうよ」って言ってほしい時でもあるじゃないですか。強さで引っ張っていくような気持ちも持ちつつ、誰かに寄り添って隣にいてあげられるようなアーティストになりたいと今の私は思っていて。そういう柔らかさをアーティスト名でも表現するためにこの表記にしました。

──まさにJunnaさんと言えば、これまで『マクロスΔ』のワルキューレやアニメ主題歌などで築き上げた“強い歌声”のイメージがあります。再デビュー後の今は持ち前のその歌声を、どんなふうに届けていきたいですか?
Junna:今までは地声を全面的に押し出していました。ファルセットをなるべく使わずに、若いからこそ出せる強さを大事にしながら歌ってきたんですけど、そういう良さも残しつつ、より強弱を出したほうが、より自分の声の良さが引き立つと思っていて。
──なるほど。
Junna:たとえば今作の2曲目の「GUM」では、地声で出せる音域でも「柔らかい歌声を大事に」ということをディレクターさんと話し合いました。そしたら、最初のキー合わせやプリプロをしている段階から苦労しました。今まで限界突破で歌い続けてきたので、それを封印するのが難しくて。自分が好きなように歌うのを制限するのって、こんなに難しいんだと思って。
──無意識にいろんなテクニックを使ってきたのを、むしろ今は意識して制限していると。
Junna:はい。真っ直ぐに歌うのがこんなにも難しいことなんだと思いました。特に「GUM」は限界突破もありつつ、真っ直ぐさも忘れないっていう使い分けが難しかったですね。
──そうしたスタイルの変化に踏み切るのに、不安や葛藤はありませんでしたか?
Junna:自分の中では「GUM」がみんなに届くまではドキドキだったんです。ずっと聴いてくださっているファンの方々が、「GUM」をどのように受け取ってくださるのか、すごく不安でした。“再デビュー”っていうのが先に出て、レーベルを移籍して、今までと方向性が変わっちゃうんじゃないかと不安に思われた方もいたと思います。でも私自身としては今まで伝えたかったことと今伝えたいことは大きく変わっていなくて、どれも自分自身です。「GUM」がみなさんのもとに届いている今は、音楽の中にこれまでの私も新しい私もいることがちゃんと伝わっていると思うのでもう不安はないです。

──「GUM」の〈最低な昨日なんて越えていけ〉というフレーズがすごく印象的でした。
Junna:再デビューが決まるまで2年間あったんですけど、その2年間がこれまでの中で一番つらくて、一番しんどい時期でした。ライブはずっとしていたので止まっている感覚はなかったのですが、自分の中では新曲を届けられないもどかしさがありました。だからこそ、〈最低な昨日なんて越えていけ〉という歌詞には、自分自身へのメッセージのような気持ちも込められているんです。あの2年間があったからこそ、今こうして新しい作品を届けられているんだと思います。
──この曲からは“自分らしく生きていく”という意志を感じます。Junnaさんは以前と比べて“自分らしさ”について考えることは増えましたか?
Junna:新しいレーベルに移籍するにあたって、まずは自分を知るところから始めようという話をしたんです。新しいスタッフさんに自分のことを知ってもらうことももちろんですが、自分自身を知ることで、やりたい音楽やアーティストとしてやっていきたいことが見えるようになるからって。今までよりも、自分と向き合うことの大切さ、向き合ったからこそ知ることができる自分も見えてきました。
──“自分らしさ”は見つかりましたか?
Junna:実際の私は全然強い人間じゃないんです。落ち込むことも多々あるし、そういうネガティブな自分がたくさんいたことにこの2年間で気づいて。今まではネガティブを跳ね除けて歌うことが多かったけど、今はそこを大事にしてあげたいと思っています。自分の中のネガティブな感情を隠すんじゃなくて、それも含めて“自分らしさ”なんだと思っています。
──表題曲の「ハローグッバイ」は、今のJunnaさんを象徴するような“別れ”の歌でありながら、同時に“始まり”の歌でもあるように感じます。再スタートのこのタイミングで、この曲をEPのタイトルに掲げた理由を教えてください。
Junna:「ハローグッバイ」という言葉は、私がライブなどで大切にしている言葉なんです。たとえば、ライブの最後に「次の曲で最後です」って言うと、お客さんが「えー!」って言い返してくれますよね。
──お決まりのやつですね。
Junna:はい(笑)。私はそこで「じゃなくて?」と言って、みんなに「イエーイ!」って言ってもらうんです。ライブの最後の曲ってライブが終わっちゃう名残惜しさがあって悲しいはずなんですけど、「このライブをしっかり終わらせられた私たちすごい」って思うし、終わらせたからこそ次の「ハロー」が言えると思っていて。そういう“ポジティブなグッバイ”にしたいと思っているんです。

──別れや終わりをマイナスに捉えていないのがとてもいいなと思います。
Junna:その瞬間はマイナスに捉えているんです。本当はお別れしたくないから。でも、その終わりがあるからいつかまた会おうって……それがいつになるのかはわからないですけど、いつかの自分が「あの時にちゃんと終わらせてよかった」と思えていたら最高だなって。そんな思いをこの曲に詰め込んでいます。
──この曲をリスナーの方々にどんなふうに聴いてほしいですか?
Junna:みんなもたぶん“グッバイ”しなきゃいけない瞬間って絶対あると思うけど、そんな時にこの曲を聴いて、今は悲しい気持ちになっていたとしても「いつかの“ハロー”のために私は決断したんだ」と思ってほしい。そんな勇気や元気を与えられる曲になったらうれしいです。
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